トータルサービス事件:未払代金等請求事件

トータルサービス事件:未払代金等請求事件

平成13年6月27日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成11年(ワ)第1792号 未払代金等請求事件
口頭弁論終結日 平成13年3月30日
判決
東京都▲▲市▲▲町▲丁目▲▲番地の▲▲
原告 株式会社バスタブドクター
同代表者代表取締役 山口恭一
同訴訟代理人弁護士 ■■■■
同 ■■■■
■■■■
被告 有限会社■■■■
同代表者代表取締役 ■■■■
■■■■
被告 ■■■■
■■■■
被告 ■■■■
被告ら訴訟代理人弁護士 ■■■■
同 ■■■■

主文

  1. 被告らは、原告に対し、各自、金771万7808円及び内金140万円に対する平成12年6月1日から支払済みまで年20%の割合による金員を支払え。
  2. 被告有限会社■■■■は、平成12年8月18日から平成22年6月13日までの間、日本国内において、原告が販売する特殊コーチィング剤等を用いて行われるバスルーム、キッチン、洗面台、家具、家電製品などにリフィニッシング(カラーコーティング再生)する事業(バスタブドクター事業)と類似又は競合する事業を行ってはならない。
  3. 原告のその余の請求を棄却する。
  4. 訴訟費用はこれを3分し、その2を原告の、その余を被告らの負担とする。

第3 判断

  1. 証拠(甲1、2、3のないし4、4の1ないし4、5、6、原告代表者、被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
    1. 原告の主張(1)ないし(5)の事実。
    2. 原告の主張するバスタブドクター事業というのは、原告がアメリカの会社から買い入れる特殊コーティング剤(塗料)を用いて行われるバスルーム、キッチン、洗面台、家具、家電製品などにリフィニッシング(カラーコーティング再生)する事業であり、特に浴槽のリフォームが重要であるが、その特徴は、浴槽自体を取り替えることなく、現在ある浴槽をそのまま利用して、特殊コーティング剤を塗装してリフォームするので、浴槽自体を取り替えるよりも、安価にかつ早く仕上がるという利点があるというものであった。
    3. ■■■■は、不動産関係の仕事をしていたところ、住宅のリフォームにも進出しようとしていて、当時アメリカから最新技術を導入したと宣伝していたトータルサービスの事業が目に留まり、平成7年11月7日、トータルサービスとの間に、本件契約を締結し、息子の■■■■が、同年12月頃、約1週間の講習会に参加した。
    4. 本件契約を解除する旨を記載した原告の平成12年6月15日付準備書面は、同年8月18日、被告らに到達した。
  2. 被告らは本件契約が要素の錯誤により無効であると主張する。
    1. 証拠(乙2、被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
      1. ■■■■は、講習を受けた後、被告会社の代表者として、本件契約にかかるリフォーム事業を開始したところ、次のような理由から、利益があがらず、初年度は750万円の赤字、2年度も利益がでなかった。
        1. 塗料は、アメリカ製のものであることから、値段が高く、日本の塗料の最高級品の約1・5倍で、代金は前払いで、製品が手元に到着するのに2週間程かかった。
        2. 浴槽を取り替えずにリフォームする方法は、日本国内で他にC社とN社と2社が行っていた。
        3. 原告の設計価格では、浴槽1個の塗装につき13万6000円であったが、当初1年間はキャンペーン価格9万8000円でやってくれと言われ、この期間が過ぎても、原告が雑誌とかテレビで行う宣伝がキャンペーン価格によっているので、顧客からもその価格でするように求められ、設計価格に戻せなかった。
      2. 本件契約にかかるリフォームの方法は、塗料をシンナーで希釈して塗るものであるため、■■■■は、塗料の溶剤臭によってアレルギー体質がひどくなった。
      3. 被告会社のしたリフォームにつき、以下のとおり、原告から技術的指導が不足し、顧客から仕事の結果につきクレームがでて、その処理に大きな労力がさかれた。
      1. ■■■■は、平成8年3月18日から、練馬区大泉の顧客に依頼されて、1戸建てのホーロー浴槽のリフォームをしようとしたところ、浴槽の表面に錆のみでなく、白花現象(エフロレッセンス)と呼ばれる白いざらざらしたものが付着していた。■■■■が現場から本部の●●に電話したところ、●●が現場に来たが、当初「これは削り取らなきゃ駄目だ」と言って自ら作業し始めたが、30分位で「このままやっていいんじゃない」と言って帰ってしまった。■■■■は、翌日、本部の▲▲にも現場に来て見てもらったが、「分からない、とりあえずやってみたら」ということであった。そこで■■■■は、通常の錆の場合の処理(表面に出ている錆を削り、パテで埋めて塗装する。)をしたが、その後、塗装に無数の針の穴のような小さな穴ができて、錆が原因で塗装が浮いてきてしまった。
      2. ■■■■は、同年4月22日から、千葉県若葉区の顧客に依頼されて、■■のラブホテルでラメ入りの浴槽のリフォーム工事をした際、工期の都合上、遠赤外線照射器を使用して塗料を強制乾燥させる必要があり、■■■■が本部の▲■に問い合わせたところ、そのようなデータがないので、アメリカに問い合わせると言ったが、そのまま回答がなかった。
      3. ■■■■は、同年5月20日から、群馬県板郡宮城村の顧客に依頼されて、■■■■■■■■というところの20人用大浴槽の工事をした際、タイルが古かったし、寒い場所であるため温度管理が困難といった問題があったので、本部に相談したところ、原告の担当者から「やってみなくちゃわからない、よいデータになるから是非施工して結果を教えて欲しい」と言われた。
      4. ■■■■は、同年2月24日から、千葉県船橋市の顧客の依頼により、浴槽のリフォームをしたところ、光沢のある塗料が売りのはずなのに、光沢がほとんどないとのクレームを受け、本部の▲■と●●に質問したところ、明確な回答がなかった。■■■■は、独自に■■■■の■■■に尋ねたところ、■■■から、原告の指導している自動車のワックス掛けのような機械を使用することでは駄目で、板金塗装用の機械を使用するようにアドバイスを受けたので、この機械を2万円以下で購入して施工してみたら、満足のいく光沢がでた。
      5. このようなことから、本部を頼らず、原告のフランチャイジー同士でグループを作り、技術的な情報を交換し合うようになった。
    2. しかしながら、証拠(甲1、6、8、9、12、原告代表者)によれば、以下の事実も認められる。
      1. 本件契約では、本部は、フランチャイジーに対し、売上保証や営業保証をするものではない(8条3項)と定められている。

        フランチャイジーがキャンペーン価格を使う使わないとか、どのような価格設定にするか、また、原告の作成したチラシを使用するもしないも自由であった。他のキッチン、トイレ等のリフォームと合わせて受注を受けて利益をあげる努力も必要であった。

        原告は、被告会社に対し、これまでに400万円程度の仕事を紹介している。

      2. 原告は、塗料について、他のフランチャイジーから被告が主張するようなクレームを受けたことがなかった。原告には、現在、100程度のフランチャイジーが存在する。
      3. バスタブドクター事業を含むコーティング関連事業では、溶剤臭は避けて通れない問題であり、原告においては、日本の住宅事情を考えて独自に溶剤臭回収装置を開発していた。これは、活性炭とダクトを使って溶剤臭やミストを外部に排出する装置である。この性能について、フランチャイジーからもう少し軽くならないかとか、もう少し早く吸収しないかという言葉はあったが、機能しないということは言われてはいない。

        また、施工担当者には、マスクとゴーグルの装置が義務付けられていた。

        塗料のスプレーリングは1度に何時間も連続して行うものではなく、マスクとゴーグルの装着等の作業場のルール、マスクの活性炭の期限等について遵守することになっていた。

      4. 浴槽の錆処理については、100%再発しないことを保証することは難しく、最大限に再発を防止するためには錆の部分を可能な限り削り取り、そこに錆防止処理を施し、それ以上錆が広がらないようにするのが一般的な方法であった。
      5. 原告代表者は、常々原告の社員の対応に問題がある場合には、代表者個人に直接に連絡をして欲しい旨、講習等を通じて伝えていた。原告代表者は、■■■■から対応が遅いとかのクレームを受けたことはあったが、担当者に注意したり、米国に問い合わせるために時間が要るなどの説明をした。

        なお、被告会社は、毎月、■■■■名で営業報告書を提出しており、同書面には「本部への提案・意見など」という欄があるが、被告会社から何ら苦情や提案とった記載はなかった。

      6. 被告会社は、平成9年5月、原告との間に、契約締結後1年でエリアを群馬県■■■■に変更する約定を変更し、エリアを■■■■区内のままとすることとし、このためこれまで低い価格で支払っていたエリアライセンス料の差額として、新たに135万5480円を支払った。このことは、本契約締結後1年半程度を経過した後に、被告会社において、これだけの金員を支出してもなお本件契約を継続するメリットを認めていたことになる。
      7. 被告会社が原告に提出した営業報告書によっても、開業後から平成9年11月までの通算累計で、バスタブドクター事業の工事件数は57件で工事金額は837万7464円であり、その他のリフォームの工事件数は16件で工事金額は525万7340円であり、収入があった。

        被告会社は、事務所経費として、■■■■が購入した居住用のマンションの支払を含めたり、倉庫を借りた賃料を含めたりしていたが、どちらもバスタブドクターの事業には必要があるとはいえず、これも事業の収入が少ない原因であった。

    3. そうすると、たしかに、被告会社において本件契約に基づくリフォーム事業を始めたところ、期待したほど利益があがらず、また個々の技術的な問題について原告に尋ねても確たる回答を得られなかった場合があったとはいえる。しかしながら、利益については、被告会社が経費に必要ないものを入れていたこともあり、技術的な問題については、新規の事業であるから、フランチャイジーである被告会社において試行努力して解決しなければならない点もあったのであり、原告としても全く誠意がなかったというわけではなく、このような事情を考えると、本件契約がフランチャイズ契約として成立しえないような内容のものであるとまで認めるに至らない。
      したがって、被告ら主張の本件契約が錯誤により無効であるとの主張は認めることができない。
  3. 被告らは、本件契約につき原告に債務不履行があったため、被告会社において契約を解除した旨主張するところ、証拠(乙1、被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は、平成10年8月26日、本件契約を無条件で解約する旨の書面を原告宛に送付したことが認められる。

    しかしながら、前示2項認定の事実からして、原告に債務不履行があったと認めるに至らない。

    したがって、被告らの解除の主張は、採用することができない。

  4. 被告らは、競業避止義務の期間は長期に過ぎ、また、1億円の違約損害金は高額に過ぎる旨主張する。
    1. 証拠(甲3の1ないし4、4の1ないし4、7の1・2、10、11、原告代表者、被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
      1. 被告会社は、平成10年8月26日、原告に対して本件契約の解約を申し入れたのと前後して、原告の使用している石油から製造する有機塗料と異なり、ケイ素等を原材料とする無機塗料を使用するとして、浴槽その他をリフォームする仕事をした。
      2. 被告会社は、自己が解除の意思表示をしたという後も、原告に対して本件契約の定められた資料の返還をしなかった。
        原告は、平成10年12月及び平成11年1月、被告会社や連帯保証人らに対し、本件契約を維持する意思があるのか、あるいは契約関係の清算に向けて話合いをする意思があるのかを記載した内容証明郵便を送付したが、被告会社は、これを受領せず、連帯保証人らは、何らかの回答をしなかった。

        被告会社は、原告が本訴を提起した後、資料の一部を返済したが、その余の資料は既に手元にないとして返還していない。

      3. 被告会社は、平成12年4月には、「ザ・リフォーム」という毎週1回発行の業界紙に「便器塗装で年商3800万円アップ」という表題で「■■■■(■■■■■■区 ■■■■社長)は無機塗料を用いた塗料で昨年度売り上げを3800万円伸ばした。無機塗料をムラなく塗る技術でトイレの便器、浴槽も塗装が可能になったことが大きい。業界間の紹介で月10件、30万前後で住宅のトイレ、浴槽を塗装する。これまで便器や浴槽のひび割れ、老朽化には取り換え工事を行うのが一般的だった。同社ではひび割れも塗装で半永久的に保全出来るという。無機塗料の主原料はガラスと同じケイ素で、ひび割れを上からコーティングするためだ。…顧客と話し合いをする際は施工実例を見せ、取り換え工事よりも低価格で工事できる点や無機塗料を用いた体に無害な塗料であること、洗浄し易い衛生面の長所をプレゼンテーションしている。」などと記載した記事を載せた。

        また、その頃、同紙に「溶岩を含んだ浴槽塗料を開始」という表題で「■■■■(■■■■■■区、■■■■社長)は…粉末状の溶岩を織り込んだ無機塗料での浴槽の塗料を本格的に開始する。この溶岩を含んだ塗料は遠赤外線の反射率がほぼ100%で温泉並みの保湿性に優れているのが特徴だ。」などと記載した記事を載せた。

      4. 被告会社は、平成12年8月には、同じく「ザ・リフォーム」という新聞に、「無機塗装の技術施工業務でFCを展開」の表題で「■■■■(■■■■■■区、■■■■社長)は無機塗料の塗装の技術を柱にフランチャイズ展開を始める。…屋号は■■■■■■■だ。このFC加盟には、権利金、研修費用、保証金、機材も含め210万円で、現在は先行予約を受けつけている。施工業務にはロイヤリティ制を用い、施工に対しての15%から85%までのロイヤリティが発生、実績に応じポイントバックしていくという。…同社では無機塗料を用い、ひび割れた浴槽、トイレ等、タイル面の補修を行っている。取り壊し替える作業では100万円程度する浴槽もコーティングにより30万円から40万円の価格で施工は可能。更に体に無害とされる無機塗料の使用で、人体にも環境にも易しい。同社ではこの技術を習得することで昨年は3800万円の売上げ増に成功している。」などと記載した記事を載せた。
      5. 被告会社は、実際に、「■■■■■■■」「平成12年10月正式スタート」「フランチャイズチェーンご加盟のご案内」「先行募集開始」などを記載した案内書を作成し、自らが本部となって、浴槽等のリフォーム業を含むフランチャイズチェーンを展開を計画した。
    2. 以上認定の事実によれば、被告会社は、自己が契約解除をしたとする平成10年8月以後も、原告が契約解除をした平成12年8月18日以後も、本件契約の対象であるバスタブドクター事業と同一ないし類似の事業を継続していたと認められる。

      被告会社は、被告会社の方法は無機塗料を使用するもので、有機塗料を使用する原告の方法とは別個のものである旨主張するけれども、原告の浴槽などのリフォーム事業の主たる着眼点は、浴槽を取り替えることなく、錆止めを施してから塗料を塗ることによってリフォームをし、これによって浴槽等自体を取り換えるよりも安価にかつ低廉にリフォームをしようとするものであって、被告会社の方法もその根本的考え方において同一であるということができる。

      そうすると、被告会社は、本件契約における競業避止義務に違反しているということになる。

    3. 被告らは、10年間にわたって競業避止義務を要求するのは、長期にすぎる旨主張したところ、たしかに、基本的には職業選択の自由、営業の自由が存在し、また、証拠(原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、原告と同様なリフォーム業をしている会社が現在国内に3,4社存することが認められているが、これらの3、4社が何時からそのような業務を始めたのか明らかでないし、また、同証拠によれば、①原告としても、米国の本部に支払った権利金、米国との契約締結に至るまでの調査費用、渡航費用、通訳費用、契約締結時の部弁護士費用、あるいは契約締結後に延べ数十人にわたって米国に渡航させて研修を数か月受けさせた費用、その通訳費用、あるいはマニュアルの翻訳費用、その手直し費用、英語のパンフレットを日本語訳に替える費用等開業するまでに時間と費用をかけていること、②浴槽のリフォームをする際に、浴槽を取り替えないで塗り替えるというやり方が一般消費者にまだ普及しているとはいえないことが認められるので、これらのことを総合すれば、本件契約における10年の競業避止義務の期間の定めが公序良俗に反して無効とまでいうことはできない。

      そうすると、原告のした本件契約の解除の効力が発生した日の翌日である平成12年8月19日から10年以内であって、原告の請求する範囲である平成22年6月13日までの競業避止義務を認めることができる。(もっとも、契約解除以前にも競業避止義務が存在することは、証拠(甲1)によれば、本件契約33条3項により明らかである。)

    4. 次に、違約損害金の額について検討するに、前示認定事実によれば、■■■■及び被告会社は、本件契約において、競業避止義務に違反した場合の違約損害金として1億円を支払う旨の約定をしたことが認められる。

      しかしながら、本件契約における毎月の基本ロイヤリティ及び広告企画費等は5万円であるから、その年額は60万円であって、1億円という額は、基本ロイヤリティ及び広告企画費等の年額60万円の166倍強であって、166年分強に該当する。このような高額の違約損害金の約定は、原告がフランチャイズ契約における優位な立場を利用して相手方に一方的に不利な合意をさせた条項として、相当な金額の部分を除き、公序良俗に反して無効であるといわざるを得ない。

      そして、前示認定の諸般の事情を考慮すると、被告会社が負担すべき違約損害金の額は600万円が相当であると判断される。

  5. 以上により、原告の本訴請求は、次の限度で理由があり、その余は理由がない。
    1. 被告らに対し、各自、平成10年3月1日から平成12年6月30日までの基本ロイヤリティ及び広告企画費等の未払額140万円、並びにこれに対する平成10年2月28日から平成12年5月31日までの約定による年20%の割合による確定遅延損害金31万7808円(別紙遅延損害金計算のとおり)、並びに140万円に対する平成12年6月1日から支払済みまで同じく約定による年20%の割合による遅延損害金の支払を求める部分。
    2. 被告らに対し、各自、違約損害金600万円の支払を求める部分。
    3. 被告会社に対し、平成12年6月14日から平成22年6月13日までの間、日本国内において、原告が販売する特殊コーティング剤等を用いて行われるバスルーム、キッチン、洗面台、家具、家電製品等にリフィニッシング(カラーコーティング再生)する事業(バスタブドクター事業)と類似又は競合する事業の禁止を求める部分。
  6. よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所八王子支部民事第3部 裁判官 関野 杜滋子